専門知識を持つ多職種チームによる「心臓リハビリ」

心臓リハビリテーションイメージ写真

心臓リハビリテーション(以下、心臓リハビリ)は心臓病をお持ちの患者さまや、心臓の手術を受けられた患者さまが日常生活や社会生活に復帰し、健康で活動的な毎日を送れるようにする「総合プログラム」です。運動能力や心臓機能の改善を図り、生活の質の向上や、再発、再入院の予防、さらには病気や生活への不安や、それによるうつ状態の軽減を目指して、運動療法を中心に学習活動・生活指導・カウンセリングなどが行われます。

心臓リハビリの効果

心臓リハビリは心血管疾患の死亡リスクを低下させることがわかっています。狭心症や心筋梗塞など虚血性心疾患の患者さまが心臓リハビリを行うことにより、行わない場合に比べて心血管疾患による死亡率が26%低下し、入院のリスクが18%低下するという報告があります。また、心不全の患者さまが心臓リハビリを行うことにより、行わない場合に比べてあらゆる入院が25%減少し、心不全による入院が39%減少するという数字もあります。

また、具体的には以下のような効果があります。

  • 体力が向上し、日常生活が楽になる
  • 息切れなどの症状が軽減される
  • 心臓の機能が改善される
  • 血管が広がりやすくなり、血流が改善される
  • 動脈硬化の進行を抑制する
  • 血圧や血糖値が改善される
  • 不安やうつ状態が改善され、快適な社会生活を送れるようになる
  • 心筋梗塞の再発や突然死のリスクが低下する

など

当院では医師、看護師、理学療法士、保健師、臨床心理士など専門家による多職種のチームで、一人ひとりの患者さまに合わせたオーダーメイドの心臓リハビリを行っていますので、お気軽にご相談ください。

心臓リハビリの対象となる疾患

心臓リハビリは主に以下のような心疾患のある方、手術後の方などが対象になります。

  • 心筋梗塞
  • 狭心症
  • 慢性心不全
  • 末梢動脈閉塞性疾患
  • 心臓手術後
  • 大動脈解離、解離性大動脈瘤、大血管手術後
  • 経カテーテル大動脈弁置換術(TAVI)後

など

※以上の病気の場合、通常は心臓リハビリ開始から150日の期間、健康保険適用となります。例外として医師が継続の必要があると認めた場合は150日を超えて健康保険が適用される場合があります。

心臓リハビリで行う内容

心臓リハビリは大きく分けて「運動療法」「生活指導」「心理的サポート」の3つの柱で構成されています。これらを患者さまの状態に合わせて行っていきます。

運動療法

リハビリ開始前に各種検査を行い、その結果に基づいて医師が患者さまに適していると考えられる「運動処方」を出し、有酸素運動や筋力トレーニング(筋力増強運動/レジスタンストレーニング)を行っていきます。
なお検査としては、体の筋肉量や脂肪量を調べる「InBody測定」や、マスクをつけてエルゴメーターと呼ばれる自転車を漕ぎ、酸素摂取量、二酸化炭素排出量、呼吸数などを測定して心機能、肺機能、骨格筋機能、末梢循環などの状態を評価する「CPX検査」などがあります。

有酸素運動

有酸素運動はウォーキングや自転車エルゴメーターなどにより、比較的軽い負荷で行っていきます。運動中は心電図や血圧をモニターし、専門のスタッフが付き添って、無理なく正しい姿勢による運動ができるよう、指導します。

筋力トレーニング

筋肉に負担をかけ、筋肉量を増やし、筋力や持久力を高めるためのトレーニングです。椅子を補助にしたスクワットや、つま先立ち、腿上げなど、下肢の筋力向上を中心に行い、階段の昇り降りや物を運ぶなどの日常の動作能力の低下を防ぎます。こちらも専門スタッフが付き添います。

生活指導

心臓に負担をかけない生活習慣を身につけるための、様々な指導を行います。動脈硬化を促進させ、心疾患を助長する糖尿病や高血圧症などの生活習慣病を改善するための食事指導、心臓病のリスクを大きく高める喫煙やアルコール摂取を抑制する指導などがあります。さらに、ストレスは心臓に負担をかけるため、リラックス法や趣味の楽しみ方を一緒に学んでいきます。

心理的サポート

心臓病になると不安やストレスを感じることが多くなります。さらにそれらが心臓に負担をかけてしまいます。そのため専門のスタッフが不安や悩みに対する相談に応じます。またスタッフによる様々なセミナーや、同じ病気を持つ患者さま同士の交流の場などを設け、不安やストレスの軽減を図っていきます。